雪、ときどき嵐

アイドルが好きだ。Twitterはコチラ→@yu_yamiiii

若きセンターの見えない場所の苦しみをそっと静かに想像出来るファンでいたい



私は、とある女性アイドルをデビュー前から応援していた。彼女たちは"笑わないアイドル"として鮮烈なデビューを飾り、あっという間にスターダムにのし上がった。そしてそのセンターを務めたのが、グループ最年少の15歳の少女だった。


最初は、普段は天真爛漫な女の子でパフォーマンスの時だけ豹変するというイメージだった。

でも次第に、彼女は壊れていった。音もなく、気づけば彼女は笑えなくなっていた。孤高の存在になり、彼女に寄り添える人は少なくなっていった。(これは私が彼女達のあの頃の様子やインタビュー、ドキュメンタリーを見て感じた部分であるから本当に正しいかどうかは分からないが)


"最年少でセンター" 


その重圧と恐怖はきっと普通の人には分かりえない。売れてしまえば尚更。

でもそれは、人が壊れるくらい、笑えなくなるくらい、お仕事が出来なくなるくらい追い詰められることなのだと思う。ネットの海ではあることないことを書かれ、大人には期待してるよと囁かれる。

怖くないはずがないのだ。


だから、私は大好きな9人組の末っ子の彼がいつか壊れてしまうんじゃないかとずっとずっと心の片隅で恐怖を感じながら応援していた。

特に2組同時デビューだったから、15人でテレビに出た時なんかはいつも怖くて。

人は変化が苦手な生き物だから、新しいものに対して過敏になる。その存在が目立てば目立つほど。

少しの言葉尻を捉えて勝手な想像を膨らませ、人は簡単に批判する。


特に彼は今まであったものの中に16歳で放り込まれたわけだから、批判の波は大きかった。それは今でも変わらない。

普通の17歳だったらスルーされるようなことも、彼は押し付けられて乗り越えなければならない状況にいる。




ただ彼女と彼は、"周りに支えてくれるメンバーがいるかどうか" という点が違うと思う。

彼女に支えてくれる人がいなかったというわけではない。ただ、周りの皆もとっても若かった。彼女はあまりにも天才で、周りはどうしたらいいのか分からなくなってしまったのだと思う。

一方の彼は、周りに年上の兄たちがいる。経験を重ねて、自分に良い意味で自信を持つ彼らならば、末っ子に対して申し訳なさなどを感じることなく傍にいるだろう。特に一番歳の近い兄は、すぐ隣で末っ子を支えている。

至るところで末っ子が歳が近い彼の名を出す時、私は本当に良かったと思うのだ。

壊れてしまう前に、ちゃんと支えてくれるメンバーがいる。縋りたいときに、ちゃんと縋って甘えられる人がいる。それは奇跡に近い。

きっと歳が近かったら、彼じゃなかったら、嫉妬や羨望の感情がどこかに生まれたのかもしれない。センターというものは別格扱いになることも多いから、羨んでしまうことは仕方がないことだと思う。

だけれども、彼はひたすらに末っ子を愛す。大丈夫、お前はできる、そう言って支える。番組では「俺も助けられてて」と言って、お互いに支え合っているんだよと伝える。その言葉は気を使って言っているのではなくて、多分本当に助けられているからこそのものだと思う。

真っ直ぐで優しくて強くて温かい彼が、若き天才の傍にいて本当に良かったと思った。同じタイミングでグループに入ったのが彼じゃなかったら怖かったとさえ思う。




もしある日アイドルが壊れてしまっても、ファンはその様子を遠くから見ていることしか出来ない。どんなに好きだよと伝えてももう遅いんだと気づいた時のあの絶望。度重なる世間の批判の渦を抑えることなど出来ない無力感。

笑わなくなって、立っている姿さえ危うくなって、それでも、天才はどんな時でも美しい。だからこそ苦しい。

私はひたすらに苦しかった時がある。




世間はきっとこれからも彼に厳しいと思う。ちょっとしたことですぐに揚げ足を取りたがる人ばかりだ。生きづらい世の中。


だから、8人の兄たちに、そして特にきっと精神的支柱である一番歳の近い兄に、末っ子のセンターは思う存分甘えて欲しい。



そして私は、何があっても変わらず彼が好きだと叫び続けていたい。何事も跳ね返す強さを持っていて、「いる意味」を探しながら仕事が出来て、投げつけられる刃で流した血を隠して笑顔を作る彼の強さが好きだ。

完璧である必要は全くない。そこに立ってパフォーマンスしてくれていること自体に、もう既に大きな意味がある。


彼が最近座右の銘として「好きなことで生きていく」を挙げていたことに私は泣きそうになった。それは単に好きなことだけやるという意味ではない。「与えられたものも全力で楽しんで好きになりたい」と彼は言うのだ。周りの環境に文句を言ったりするのではなくて、自分がどうすべきかを考えられる人なのだと思った。

こんな17歳はきっとどこにもいない。


のびのびと、健やかにアイドルをして欲しい。無理だと思ったら逃げたっていい。きっと彼は責任感が強いから逃げないだろうけど、それでも最後は壊れる前に逃げて欲しい。強い人だということは、とうに知っている。でも、人は強いだけじゃないと思うから。


私は、脆くて弱い、世間には絶対に見せない場所があるんだということを想像出来るファンでありたい。

ファンはどこまでも無力だから。ちっぽけで何も出来ない。

唯一できるのはひたすらに好きだよと叫び続けることだから、それだけは欠かさずにいたい。


数年後、彼が大人になった時。

今の苦しみさえも笑って振り返ることができていたらいいなと思う。